躁うつ病の原因は、現在も完全には解明されていません。しかし、遺伝的要因(家族歴)と環境的要因(強いストレス・睡眠障害・生活リズムの乱れなど)が組み合わさることで発症リスクが高まると考えられています。
また、脳内の神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンなど)のバランスが乱れることが、気分の極端な変動に関与しているとされています。「性格の問題」や「意志の弱さ」が原因ではなく、脳機能に関わる疾患であることを理解することが大切です。
「気分の波が激しい」「元気すぎると思ったら、突然やる気が出なくなる」そのような状態が繰り返されるとき、躁うつ病(双極性障害)の可能性があります。躁うつ病は適切な診断や治療によって症状の安定が期待できる疾患ですが、放置すると日常生活や人間関係に大きな支障をきたすこともあります。本記事では、躁うつ病の症状・原因・治療法をわかりやすく解説します。受診すべきか迷っている方も、参考にしてください。
躁うつ病(双極性障害)とは、気分が過度に高揚する「躁状態」と、気分が著しく落ち込む「うつ状態」が繰り返し現れる精神疾患です。
単なる気分の浮き沈みとは異なり、躁状態のときは自分では「調子がよい」と感じることが多く、病気だと気づきにくい点が特徴です。そのため、うつ状態で受診した際に初めて診断されるケースも少なくありません。10代後半から30代にかけて発症するケースが多く見られますが、子どもから高齢者まで幅広い年代で発症しうる精神疾患です。
躁うつ病の症状は、躁状態とうつ状態で大きく異なります。それぞれのサインを理解することが、早期発見・早期受診につながります。
躁状態では、以下のような症状が数日〜数週間にわたって続くことがあります。
躁状態は本人が「絶好調」と感じることが多く、自分では異変に気づきにくいのが特徴です。家族や周囲の人が「いつもと様子が違う」と感じたときは、専門機関への相談を検討することが重要です。
うつ状態では、次のような症状が現れることが多く見られます。
うつ状態の症状は「うつ病」と似ているため、躁うつ病がうつ病として誤診されることがあります。過去に「調子が良すぎた時期」があったかどうかも、診断の際に重要な情報となります。
また、躁うつ病の人は寛解期(躁・うつ、両方の症状が落ち着いている期間)があります。この期間を長く安定させることが治療の目標となります。
躁うつ病の原因は、現在も完全には解明されていません。しかし、遺伝的要因(家族歴)と環境的要因(強いストレス・睡眠障害・生活リズムの乱れなど)が組み合わさることで発症リスクが高まると考えられています。
また、脳内の神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンなど)のバランスが乱れることが、気分の極端な変動に関与しているとされています。「性格の問題」や「意志の弱さ」が原因ではなく、脳機能に関わる疾患であることを理解することが大切です。
躁うつ病は、主に双極I型障害と双極II型障害に分類されます。
双極I型障害は、日常生活に大きな影響が出るほど強い躁状態が現れるのが特徴です。気分が異常に高まり、活動的になりすぎたり、衝動的な行動をとったりすることがあります。
一方、双極II型障害では、比較的軽い躁状態である「軽躁状態」と、うつ状態を繰り返します。軽躁状態は本人が不調と感じにくく、「いつもより調子が良い時期」として見過ごされることも少なくありません。
双極I型と双極II型では症状の現れ方や治療方針が異なるため、正確に診断することが大切です。
躁うつ病は、誤解されていることも多く、受診の遅れにつながる場合があります。
代表的なのが、「気分の浮き沈みは誰にでもある」という考えです。確かに気分の変化自体は珍しくありませんが、躁うつ病では症状の程度が強く、生活や仕事、人間関係に大きな影響が出ることがあります。
また、「うつ病と同じ治療をすればよい」という誤解にも注意が必要です。躁うつ病では、抗うつ薬の使い方によっては躁状態が強く現れてしまうことがあるため、専門医による正確な診断が重要です。
さらに、「症状が落ち着いたら治療をやめてもよい」と考えてしまう方もいます。しかし、躁うつ病は再発を繰り返すことがあるため、症状が安定している時期も含めて、医師と相談しながら治療を続けることが大切です。
躁うつ病の診断には、問診・心理検査・身体検査など複数の方法を組み合わせます。当院では、以下の方法で診断を進めています。
問診
問診では、現在のうつ症状だけでなく、過去にいつもより活動的だった時期がなかったかも確認します。たとえば、気分が高まりテンションが高かった、あまり寝なくても元気だった、普段よりよく話していた、行動的になっていた、などの状態です。こうした躁状態・軽躁状態の経験があるかどうかは、うつ病と躁うつ病を見分ける大切なポイントになります。本人は調子が良かっただけと思っていることも多いため、過去の様子を丁寧に振り返りながら診断を進めます。
家族や周囲からの情報収集
躁うつ病の診断では、ご家族や周囲の人から話を聞くことも重要です。特に軽躁状態の時期は、本人が自分の変化に気づかず、単に調子が良いと感じていることがあります。例えば、急にお金をたくさん使うようになった、夜遅くまで活動していた、普段よりよく話したり怒りっぽくなったりしていたなどの変化です。周囲からみた普段との違いを確認することで、気分の波の大きさを把握し、躁うつ病の見落としを防ぎます。
気分の波の数値化と経過観察
質問票や気分グラフを使って、気分の変化を客観的に確認することも重要です。気分の波を客観的に把握するために、MDQ(気分の変動に関する質問票)などの質問票や、日々の気分の変化を記録するライフチャート(気分グラフ)を活用します。気分の高低や変化の周期を見える化することで、本人と医療者が状態を共有しやすくなります。また、診断時だけでなく、薬の効果の確認や再発の兆候を早めに見つけるためにも役立ち、治療方針の調整にも活用されます。
身体的検査
気分の高まりや活動的な状態は、躁うつ病だけでなく、甲状腺の病気や脳の病気、薬の副作用などが原因で起こることもあります。そのため、血液検査などを行い、身体の病気が関係していないかを確認します。原因を確認することで、診断や治療方針を検討する際の参考になります。
躁うつ病の治療は、薬物療法を中心に、精神療法や生活指導を組み合わせて行うのが一般的です。治療は長期的な取り組みが必要ですが、適切な治療や支援を継続することで、症状の安定を目指すことができます。
躁うつ病の治療では、薬物療法が治療の中心となります。
躁うつ病では、うつ病で使われる抗うつ薬だけではなく、気分の大きな波を抑えるために、気分安定薬(リチウム・バルプロ酸など)や抗精神病薬を主に使用します。これらの薬は、躁状態やうつ状態を改善するだけでなく、再発を予防する役割もあります。そのため、症状が落ち着いている時期でも、継続して服用することが大切です。治療では、医師が効果や副作用を確認しながら、一人ひとりに合った薬の種類や量を調整していきます。
躁うつ病では、薬物療法とあわせて、病気への理解を深める心理教育や精神療法も重要です。
躁うつ病は再発しやすいため、自分の気分の波の特徴や、再発のサインに早めに気づくことが大切です。例えば、睡眠時間が短くなる、活動的になりすぎる、といった変化を確認しながら、自分の状態を把握していきます。
また、ライフチャート(気分グラフ)を使って日々の気分を記録し、ストレスへの対処法を学ぶことで、症状が悪化する前に対応しやすくなります。ご家族が病気について理解を深めることも、早期発見やサポートにつながります。
躁うつ病では、生活リズムを安定させることが症状の安定につながります。
特に睡眠の乱れは気分の波に大きく影響し、夜更かしや睡眠不足が躁状態のきっかけになることがあります。反対に、家にこもりがちな生活は、うつ状態を長引かせる原因になることもあります。
そのため、起床時間や就寝時間を一定にする、日中の活動量を整えるなど、規則正しい生活を意識していきます。また、仕事や学校での強いストレスや過労を避けるために、環境を調整しながら、無理のない生活を目指します。
躁うつ病は、適切な治療を受けずにいると、症状が悪化したり再発を繰り返したりすることがあります。
躁状態では、気分が高まりすぎることで衝動的な言動が増え、仕事や学業でのトラブル、人間関係の悪化につながる場合があります。浪費や無理な行動が増えてしまうケースも少なくありません。
一方、うつ状態が強くなると、日常生活を送ることが難しくなるほど意欲が低下し、消えてしまいたいと感じる気持ちが強まることもあります。
また、躁うつ病と気づかないまま抗うつ薬を単独で使用することは、躁転や急速交代化のリスクを高める可能性があるため注意が必要です。気分の波が大きい、気分が高まりすぎる時期とうつ状態を繰り返しているなど、気になる症状がある場合は、早めに精神科・心療内科へ相談することが大切です。
気分の落ち込みと気分の高まりを繰り返し、仕事や家事、人間関係など日常生活に支障が出ている場合は、早めに精神科や心療内科を受診しましょう。 躁うつ病は、気分が大きく落ち込む「うつ状態」と、反対に気分が高まり活動的になる「躁状態・軽躁状態」を繰り返す病気です。以下のような状態がみられる場合は受診を検討してください。
これらの変化が続いている場合は、一人で抱え込まず、早めに医療機関へ相談することが大切です。
当院では、日本精神神経学会 精神科専門医による丁寧な診断とアセスメントを行い、躁状態・うつ状態の波を正確に把握したうえで、一人ひとりに合った治療を行います。薬物療法では、症状や体調を考慮しながら、適切な薬剤や用量を検討しています。また、公認心理師と連携し、気分の波への対処法や再発予防のためのセルフマネジメントも支援します。さらに、ご家族へのサポートや地域支援機関との連携を通じて、社会生活や復職・就労まで含めた継続的な支援を行っています。
クリニック名にもあるように、診察室での治療だけでは解決できない課題に対し、当院は地域社会の専門機関やご家族とあなたを「むすぶ」架け橋となります。
初めて精神科を受診することに不安を感じる方は多くいらっしゃいます。当院では、予約後に問診票をご記入いただき、医師が丁寧に話をうかがう診察(約30〜60分)を行います。「何を話せばいいかわからない」という方も、日頃から気になっていることや困っていることをそのままお伝えいただくだけで構いません。
ご家族の付き添いにも対応しており、同席のうえで診察を受けることも可能です。一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
躁うつ病を防ぐには、生活リズムを整え、心身への負担をため込みすぎないことが大切です。特に、毎日の睡眠・食事・運動のリズムをできるだけ一定に保つことが、症状の安定につながるとされています。
なかでも睡眠の乱れは、躁状態やうつ状態のきっかけになりやすいため、就寝・起床時間を大きく崩さないよう意識することが重要です。また、過度な飲酒やカフェインの摂りすぎは症状を不安定にする場合があるため、控えめにすることが望ましいとされています。
さらに、ストレスを一人で抱え込まず、早めに医師やカウンセラー、周囲の信頼できる人へ相談することも大切です。
躁うつ病について患者さんやご家族からよく寄せられる質問にお答えします。
躁うつ病は、自然に症状が落ち着くこともありますが、再発を繰り返すことがあるため継続的な治療が重要とされています。躁状態・うつ状態は一時的に落ち着くことがあっても、再発を繰り返すケースが多く、放置すると症状が慢性化・重症化するリスクがあります。早期に適切な治療を開始し、継続的に管理することが、症状の安定につながります。様子を見ようと思わず、気になる症状がある場合は早めに専門医に相談することが重要です。
ご家族にできる最も重要なサポートは、症状を「性格の問題」として責めず、本人の話を否定せずに聞く姿勢を持つことです。躁状態のときは本人が「問題ない」と感じていることが多く、受診を勧めても拒否されることがあります。そのような場合は無理に説得しようとせず、まず家族だけで精神科・心療内科に相談することも一つの方法です。当院でも家族相談を受け付けておりますので、どう接すればよいかわからない方もご連絡ください。